スペイン語会話上達術:「自然なスペイン語」から自由になる②

前回は、「自然なスペイン語」の強迫観念にとらわれず、通じるスペイン語を一瞬で出すことを最優先事項とすることの重要さを噛みしめたのですが、さて、で、どうやって?と問うたときに、なんとでもいえそうな役に立つのか立たないのか曖昧な精神論しか出てこなかったのですが、今回は、多少は具体的な方法について考察したいと思います。(前記事こちら»」)
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◎もっと具体的なやつポルファボール編

じゃ、手始めにこれ。

話すときに:

主語を何にするか迷わない。決めて口から一度出したら言い直さない。

おー、結構具体的。

ほんと迷うわ~。ですよ。

その上、さんざん迷って決めた主語を口に出した途端に、もっと違う気の利いた言い回し(語順)などを思いついてしまったりして、言い直しをしてしまうわ~。ですよ。

この瞬間瞬間の迷いや言い直しが、トークのキレと相手の理解と会話全体のリズムをにぶらしているのは間違いありません。

ただ、この迷いの言い訳として、

特にスペイン語はなにかと融通がきく言語である

があると思われます。

同じ内容の文章を、多少ニュアンスは変わることはあっても、語順や言い回しを変えて何パターンも作ることができます。また、主語自体を省けたりもします。

語順に関していえば、四つの要素(主語・動詞群・直接目的語・間接目的語)から成る文の場合、24種類の配列順序が可能なのだそうです。

その語順の自由さのおかげで、例えば、強調したい名詞を気持ちが先走って先に言ってしまった場合などは、助かります。ほんとは目的語にしたかったものを、ついつい一番初めに言ってしまっても、あとから修正がききます。個人的にはこの手法にはよくお世話になっています。

Ese libro (yo) no lo pienso comprar. (その本、私買うつもりない /私はその本を買うつもりはない)

ここでは、二つ目の赤マーカ部分「lo」は「Ese libro」を指していて、両方とも直接目的語です。ひとつの文章の中で、ダブって直接目的語を2回言っているので文法的に誤りかと思いきや、正しいスペイン語であります。

ちなみに、この語順は書き言葉ではあまり使われないだろうし、最も多用される標準的な語順は→「Yo no pienso comprar ese libro」です。

ただ、もちろん、そのたくさんある可能な語順の中にも、文法的には間違いでなくても、不自然なものや詩や諺などでしか使わないようなものもあるようです。

また、動詞に関しても、制限なしにフリーダムというわけではなく、適した位置というものがあって、例えば、動詞は文全体の長さの半分から左寄り(前)に置くことが原則となっており、と同時に、聴き手にも話し手にもしっくりくる位置なのだそうです(「スペイン語の入門(白水社)」P209:語順についての説明より)。

動詞の位置の原則

原則:動詞は文全体の長さの半分から左寄り(前)に置くの図 (「スペイン語の入門(白水社)」P209:語順についての説明より)

まあ、はっきり言って、実際に会話している最中に、「おい!文全体の長さの半分過ぎてたぞ!ダメなやつだな!」や「はいここまでぇ~!もう動詞言えませーん」などと言われることはないけれど、ただ単純に、会話相手に理解してもらいにくくなる、という是非避けたい事態が起こる可能性は大なので、気を付けたいところです。

あとは、主語の後置を好む動詞があったり、疑問詞のある疑問文では位置を変えられないものがあったりと、いろいろ決まり事や傾向ももちろんあるのですが、基本的には、あと他の言語と比較して、結構自由、といえると思います。

自由=選択肢が多い=迷子率高し

ところが、そんな素敵な自由さゆえの選択肢のよりどりみどりさが逆にあだとなり、結果すごく迷う、という現象が多々起きます。

同じ内容のこと言うのに、ある名詞(句)を主語(主部)にすることも目的語(部)とすることも叙述補語となることもできるし(以下例①)、自分を主語にして物事を目的語や(前置詞と共に)状況補語にしたり、逆に、物事を主語にして自分を目的語にしたり(例②)、他にも受動態にしたり能動態にしたりと、もうさまざまな言い方ができます。

例①運動するのは重要です。/重要なのは運動をすることです。

●Es importante hacer ejercicio.=Hacer ejercicio es importante.(「hacer ejercicio:運動すること」が主語部分)

●Lo importante es hacer ejercicio.(「hacer ejercicio:運動すること」が叙述補語で主語は「Lo importante:重要なこと」)

例②私は彼の訪問に驚かされた(直訳:彼の訪問は私を驚かせた)。/彼の訪問に私は驚いた。

Su visita me sorprendió.(「」→直接目的語/「彼の訪問」→主語)

●(Yo) me sorprendí de su visita.(「」→主語/「彼の訪問」→状況補語[前置詞deと共に])

そして、こんな風にたんまりある選択肢の大海原を前にして、わたしはたびたび迷子になります。たびたびどころか結構な確率で。

きっと同じようにほかにも迷子経験ある人がいることでしょう。

なので、あ、今迷っているな、と自分が話している最中に幸いにも気付いたら、

「迷うな、自然な話し方気にしてる場合かよ、青二才が、決めろ、今決めろ、今決めないと死ぬ」

くらいの自虐的カツをこれからは入れることに決めました。

今までと何か変わってくるやもしれません。

主語選択の自由たんまり=動詞選択の自由もたんまり

ところで、主語選択の自由がたんまりあるということは、つまり、動詞(述語)の選択の自由も同じだけたんまりある、ということです。

でも、主語がはじめに決まれば動詞もおのずと決まってきます。逆もしかり。でも感覚的には、主語の方がはじめに決まることが多いような気がします。

ということで次は:

とにかく主語と動詞を言ってしまう。修飾が後からどんな形ででも追加可能なのだから(大いに語順の自由さを活用せよ)。

確かに、主語と動詞(述部)さえ言っておけば、飾りっ気なく味気なく簡素すぎて説明不足となったとしても、とにかく文章として成り立つし、最低限伝えたい重要な部分はもれなく伝えることができます。

それに、本当にスペイン語は後からでもなんの問題もなく修飾語(句)を付け足したい放題です。望むなら一生エンドレスで追加可能です。でも誰も聞いてくれないだろうしおなかもすくだろうからほどほどにして常識の範囲内で留めておきます。

また、動詞に関していえば、個人的実感としても、動詞(述部)は言えるときに、つまり忘れないうちに又は後々忘れるであろうことを予測して、できるだけ先に言ってしまっておくのがいい、というのがあります。

例えば、自分が話してる最中に、主語にしたい名詞を欲張って修飾しすぎて思いがけず主部が長くなってしまう場合が多々あります。そんな時その長ったらしい主部を言い終わったところで、「あれ、動詞もう言ったっけ?まだだっけ?」とか最高にバカ丸出しの状態(←言い過ぎ)に陥ってしまうことが多々あるからです。

こんな場合に備えて、常に「動詞(述部)を早めに言ってしまっておく」の法則を守るようにしておけば、迷うこともありません。

ここで、上で言及した原則動詞は文全体の長さの半分から左寄り(前)に置く」を加味してみたら、この「動詞を早めに言ってしまっておく」の法則の信ぴょう性も深まります。

es bueno [saber que has podido salir de ese problema que te molestaba tanto desde hace mucho tiempo por aquel incidente ocurrido en tu trabajo].  動詞部述部 / [主部] )

もうこの長ーい[主部]の真ん中あたりで迷子になっていて、出口付近では、es buenoという伝えるべき大事な自分の感想・意見部分を言ったかどうかをもう忘れてしまっていて、再度、es bueno、と繰り返してしまってることがあります。

ごまかし方法としては、「sí, sí, eso es bueno…」という、つぶやき風にしつつも言い忘れていた時に備えてがっつり意図を伝えれるタイプのものを最後に付け足す、という手法があります。

でも、なるべく先に言える時はいってしまっておくことに決めて慣れておいた方が、ごまかす必要もないのでより楽なはずです。

この「主語」と「動詞」のキャッチ・把握・提示の最優先の法則は、話す時だけではなく、四技能(読む・聴く・書く・話す)すべてにおいて共通して意識すべきもので、そして有効なものだと思います。

自己表現や内容の把握において、よりスピーディーな処理の助けになるものだからです。

個人的には、この点は常に意識しようと心がけてはいたのですが、すぐ抜けてしまって、話している時でも読んでいる時でも聴いてる時でも書いている時でも、つまりいつでも、迷子になることが多いです。

話すとき書くときは迷いすぎて(つまり欲張りすぎて)そのせいで出てくるのに時間がかかるし、読むとき聴くときも意味がとっさに取れなかったりするし。

でも、やっぱり、間違いなく話す時が一番瞬間勝負なところがあると思うので、一番改善したいところです。

まとめ

要するに、

素敵だけど使えない「自然なスペイン語」より不格好だけど瞬時に出てくる「通じるスペイン語」

ていう“遠くの親類より近くの他人”みたいな感じのことですね?

つまり、いろいろな場面で、いざ頼りになるのは、現時点で自分からスッと出てくる不細工なでも親しみのわく通じるスペイン語、ということで。

そして、その「通じるスペイン語」を一瞬で出すためには、いわゆる出たとこ勝負スタイル又はその場その場瞬間瞬間に遭遇する無数の選択を柔軟に機転をきかしてスマートにしかもスピーディーにこなしていくことを身につけることが不可欠なようです。

ただ、頭の回転や機転を求められるのはつらい!!

だから、自分なりの決め事やパターンを作っておいて、足りない頭の回転を補ってしまおうという話で、その決め事として、今回書いた2点:

●主語を何にするか迷わない。決めて口から一度出したら言い直さない。

●とにかく主語と動詞を言ってしまう。修飾が後からどんな形ででも追加可能なのだから(大いに語順の自由さを活用せよ)。

は結構、効果的なのではないかなと思います。

あと忘れてはならないのは、否応なくタイムリミットがつきものの実践の場(検定試験含む)では、

その場で出てこなければ言えないのと同じだ

という残酷な事実です。

あんなにつめこんでもつめこんでも、出てこなきゃ意味なし!!

あーそれつらい!!

だからこそ、言いたいことを一瞬で出すことが、いい感じ・自然な感じで論理的に話すことより大事だったりする場合も実践の場では多々あるのでしょう。

次回も、会話術のブラッシュアップ関連の話を掘り下げてみます。

次の記事»スペイン語会話上達術:「自然なスペイン語」から自由になる:其の三』へ続く


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