スペイン語リスニングのハードルの高さ3

今回は、スペイン語リスニングのハードル二つ目である“早口又は容赦ない超早口”についてです。そして、前回言及した一つ目のハードル“スペイン語の言語的多様性”と併さってより強固となった壁をヒョイと越えれるような魔法・秘策はないか、の考察です。(前回記事⇒こちら

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ハードル②:スペイン語ネイティブの早口又は超早口


ある日、ひまつぶしにスペイン語文法の本を読んでいて、とんでもないものを発見してしまいました。

『スペイン人の話す速度はメキシコ人、アルゼンチン人などと比べると2倍ほど速い』

(冒頭の写真参照:抜粋元「中級スペイン文法」[白水社]の24ページ)

本当か∑(;)!?よ!?

言い切った!!

『~だと言われている』とか『~という意見もある』とかの逃げ語法で、一切濁すことなく。

どこかのだれかが世界の片隅で、そんなイメージあるわ~、程度に気軽にきまぐれにラフに発した文言であるなら、“ふん、ま、確かに、そんな感じしないでもない”で済ますことができたのですが、こんな一応専門書っぽい本の中で、感触や憶測で言っているのではなく学術的研究結果に基づいて記録されてるっぽい曖昧さや雰囲気押しが許されない専門書にて、こうもしかと文字にされると、おもわず目を見開かずにはいられませんでした。

見過ごすわけにもいかず、マーカーすら引いてしまいました。

あーそう…、と思ったので、まず手始めに、C2レベルのDELE対策本で扱われているリスニング素材すべてをざざっと検証してみたのですが(C1レベルも似たようなもの):

  • ◎スペイン人ネイティブによる音声素材は170~200wpm※で、
  • ◎メキシコ・アルゼンチンのネイティブのものだと130~165wpm

という結果でした。

※wpm⇒words per minute:1分間あたりの単語数(1分間に話される・読める・書ける単語数):ここではリスニング素材の中でネイティブによって話される速度を表す目安として使用してます。

つまり、確かに、スペイン人のしゃべりは比較的速いみたいです。

でも、『2倍』って言い過ぎ、という結果です。最低速度と最高速度のものを比較してやっとこ『1.5倍』です。

でも、こんな学習教材において検証してあれこれ言ってても埒があかないというかなんかリアル味が足りないというか説得力に欠ける感じがするのは否めません。

また、講演やインタビューにしても、聴衆・視聴者などに聴いてもらおう理解してもらおうという思いが前提としてある場合は、どうしてもゆっくり目になると考えられます。

だから、結局、きっと、特に近しい間柄とかでの一般的な日常会話内での話なのでしょう。

よくよく考えてみたら、日本語でもそうだし。日常会話となると、発展途上のノンネイティブ日本語学習者には理解できないようなおしゃべりのオンパレードでしょう。

そして、ちょっと思いをはせてみたら、実際確かにスペインのニュースキャスターは劇的に早口であることを思い出しました。あと、テレビなどに出てくる知識人とかではない一般人のしゃべりが非情なほど聴き取れなかった経験があったことも思い出しました。

あ、あと、当のスペイン人の意見として、

話す速度は、

 人による

があります。

必殺です。でも多分これできまりです。

しかしながら、全員ではないけど、話すのがかなり速い人も多数いるのは確かなようです。

で、これらのハードルを越えるための魔法・秘訣

“これらのハードル”詳細まとめ:

●高いハードル①:“スペイン語の言語的多様性”(前記事こちら

●高いハードル②:“スペイン語ネイティブの早口又は超早口”

この二つのハードルをまとめて同時に丸め込んで抑え込んで跳び越えてやろう、と意気込んだはいいのですが、

ほんとすごくつらいから出来ればこんな結論に至りたくなかったのですが。結局実際、魔法・秘策なんて素敵なもんはなく、

①ひたすら多種多様なものを色々聴いて慣れよう。

②早口になれよう。

 

に尽きてしまいそうなのです。いつものことながら。

・・・ぷはぁ(窒息)

わかりました、ひたすら多種多様なものを色々色々聴きます。

そして、この際なので、ついでに、そんな超早口認定と超多様認定を公式にもらってしまっているスペイン国内のいろんな地方の人たちの方言や話し方イントネーションのいろいろをながめてみることにします。

といっても、色々ありすぎます。その色々な中から、

  • どうせなら難解なものでなくせめて少しでも楽しいのがいい。
  • さらには、せっかくだから口頭試験対策になるようなものならなおいい。

ということで至った結論は、

じゃあ、モノローグのプロから学ぼう。

モノローグ(独りスピーチ)のプロ?

となると、TED系みたいな知識人著名人ものや偉人の演説ものなどから、ちびっこの独り言まで色とりどりありますが、その中からピックアップしたのは。

そうです。

独りしゃべり・独り漫談をするコメディアン(漫談家?芸人?)です。

素材は、スペインのテレビ番組『El Club de la Comedia』(YouTubeより)から発掘して色々見てみました。

この、合計10年間くらい続いているらしい番組のいいところは、独り漫談の時間が「8~10分」という、なんとC2レベルのDELE口頭試験でのスピーチと同じぐらいの長さ(6~8分)であり、さらには、聴いてる方にとっても、ちょうどいい長さであるところです。

でも、コメディーやお笑いもので困る処は、たまに、スペイン語聴き取れなかったり内容わからなくても、演者の動きや身振りだけで、おもしろかったりして、がっはっはぁ、となるところです。

では、まず

[1] アンダルシア州(Málaga)出身の演者さん:Dani Rovira

(※再生時音量注意願います)

個人的おもしろ所:コーデュロイ(pana)の丈夫さについてのとこ長いなー。

感想:誤解を恐れず言ってしまえば、最終的には正直くだらない内容なのだけど、話の持っていき方とか話し方身振り素振りとかが面白いから見てしまう、それも結構何度も見てしまう、というやつ。

次に、

[2] ガリシア州(La Coruna)出身のLuis Piedrahita:

(※再生時音量注意願います)

感想:早口じゃないし内容も簡単なので聴き易いです。

最後に、

[3] カタルーニャ州(バルセロナ)出身のDavid Guapo:

(※再生時音量注意願います)

感想:彼にものまねされてるEduard Punset(DELE試験頻出作家:関連記事こちら⇒其の一其の二)のスペインでの立ち位置や評判がなんとなくわかる内容です。

-¿A qué has venido?

-A que comáis pan.

まとめ

でも、結局、全国放送のテレビ番組でのおしゃべりだから、方言バリバリではないようです。それゆえ、地域間の違いもいうほど顕著ではない感じがします。とはいえ、個人的に知らない言葉も聴き取れない言葉も結構出てきます。が、ここはあえて辞書で調べたりしません。

でも、やっぱり、こういう大衆向けのものになると、社会背景の共有って人間同士の理解や共感には不可欠とまではいわなくても結構大事なポイントなんだな、と改めて感じます。

つまり、共通事項をたくさん持っていれば持っているほど、よりたやすくお互いに通じ合えそうだなあ、と(例えば、共通の知人・共通して知っている著名人・共通の社会的体験・共通の概念・共通の流行etc)。

特に、上のようなコメディー系なんかだと、スペシャルな非日常体験や成功話などではなく、大衆も日頃経験していて身近に感じる日常におけるまったくもって取るに足らない些細な出来事を風刺や皮肉を効かせたりしていかに面白おかしく滑稽に話して聴かすか、というところがポイントであるだけに余計、背景共有は、共感できてそして笑えるかどうか、に影響してくると思われます。

ただ、同じ社会に生きていても人による笑いのツボの違いや好みの違い、っていうのも大いに影響してくるとは思うのですが。

ところで、もっと方言バリバリのものを見たいです。探してみようと思います。

スペイン語リスニングに関連した題材として、踏み込んでみました↓↓

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一般ピーポーの話すスペイン語を聴きたい。著名人や知識人やニュースキャスターのものでなく。赤ん坊から年輩者まで。都会から田舎まで。それはもう幅広く。そして方言も含めていろんなバリエーションに触れて慣れて苦手意識があれば克服したい。DELE試験時、どの方言のものが出題されるか、のドギマギやソワソワを少しでもソフトに。


コメント

  1. わさび より:

    なかなかいい動画ですね!こういうの待ってました。愛聴させていただきます。
    ところで先日、じつは西検を受けてきたのです。1番上を受けたのですが、C2対策をしてる我にこのような問題だと・・・!?と若干なめんなよ感が出てしまいましたが、採点基準が不明なので受かるかどうかはわかりません。

    • adicto_1 adicto_1 より:

      ありがとうございます!でも、実のところ、これらのモノローグが実際の口頭試験対策に役立つかどうかは…まあ、あれですけどね!
      ところで、西検!!私は一度も受験したことがありません。ずいぶん前に一冊だけ買った西検対策本に初めて目を通した時に、無理、と何故か思い込んでしまって以来、完全に視野から消し去っていました。“若干なめんなよ感”、出たんですね!?なんか、興味をそそられました。今、その「1級・2級・3級対策問題集」ってのを奥の方からひっぱり出してきました:)ちょっと見てみます。

  2. わさび より:

    問題集はどんな感じで展開されているのか持っていないのでわかりませんが(模擬問題はついてるのでしょうか)A3の紙一枚で、左半分にスペイン語から日本語の翻訳問題で、ことわざやニュースなどからの引用ですが短文で6問ほど、右半分に日本語からスペイン語に翻訳問題で同じく短文6問ほど、のみです。回によっては長文の時もあるようです。回答用紙はなく空きスペースに訳文を書きます。1時間半の試験時間ですが30分ほど余りますので見直ししまくれます。

    • adicto_1 adicto_1 より:

      情報ありがとうございます!南雲堂フェニックスというとこから2006年に出版されている「スペイン語技能検定:合格への手引き」の1~3級向けの物なのですが、模擬試験形式にはなっていません。でも、こんな問題がでるよ、という感じで、級別に西和訳用問題20題、和西訳用20題ずつ載っています。でも、10年も前に出版されているものなので、なんか参考になるのかいなか不明です。
      そして、ながめていて思い出しました、当時「無理」と思ったわけを。まさに、日本語でですら意味がわからないような日本のことわざや詩や俳句みたいなやつを、スペイン語に訳す、ってところに引っかかってしまったのです。でも、今問題内容を見てみると、DELE対策とは結構違う角度からスペイン語学習を攻めていけるような感じがして、西検1級合格めざしてみるのもあり、と思った次第です。30分も余るんですね時間、余らしてみたいです!