今回は、前回の予告通り『そういえば、“5行エッセイ”を実用的で実践的で説得力のあるロジカルなものに発展させるのに、もうひとつ大事なものが抜けていると思いませんか、そうです、連結詞や接続詞(しかし、なぜなら、だから、その上、初めに、最後に、つまり、etc.)です。見せ掛けであったとしても流暢さの演出と話の自然な流れをつくり話術の質をグンっとアップさせるのに不可欠なあれです。』の回です。
ディスコースマーカー(談話標識)を使いこなす
めざせ、脱・迷子。
◎ディスコースマーカーとは:
(語源英語「Discourse Marker」/日本語:「談話標識」/スペイン語:「los marcadores discursivos o de discurso」又は「los conectores」)
;具体的には、連結詞・接続詞・副詞(句)・前置詞(句)・間投詞(つなぎの言葉含む)etc.
◎役割
- 文章という迷路の中で迷わないための親切な標識・道しるべとなる。
- 文章全体の論理的関係を把握するためのヒントとなる。
- 論説文の文構造の理解をより容易くする。
- 話の流れの中で、次にくる展開を予測するための目印となる。
- 一文一文にこだわりすぎず文章全体の流れを把握するための助けになる。
◎種類
“ディスコースマーカー”には具体的にどんなものがあるか、なのですが、とにかく腐るほど種類があるみたいなのです。
ざっと並べると、
順接(だから、したがって)、逆接(しかし、けれども、~だが)、譲歩(なるほど・確かに~だが[実は~だ])、追加(また、および)、言い換え(つまり)、具体化(例えば)、結果・結論(その結果)、対比(一方で、他方で)、順列関係(=変化の予告:初めに、次に、後、最後に、結局)、トピックの導入 (~に関しては)、話題の転換(ところで)、直前の論旨の破棄・限定(とにかく、いずれにせよ)…
などなどなどなど。
で、巧みに使いこなせたらどうだっていうのか
つまり、“ディスコースマーカー”とは、文章読解、文章作成、スピーチ、会話などの、読む・聴く・書く・話す、のインプットアウトプット関係なく全てのケースにおいて、スムーズな理解や組み立ての助けとなるもののようです。
一見、キレキレで有能風だけど、実際に巧みに使いこなせたらどうだっていうのでしょうか。
例えば、英語学習界では、特に長文読解(特に論説文※1)において、より効率的に、つまり、より速く確実に読むための術として知られている、“パラグラフリーディング”(※2)というメソッドの中でのキーポイントとなっているようです。
(※1)論説文:自分の考えをわかりやすく他人に伝えるために書かれた文章(取扱いテーマ:硬め)
(※2)“パラグラフリーディング”とは:論説文の話の筋を見失わないようにするために、話の流れを想定しながら段落ごとに読み進めていくテクニック
(↑このサイト、さすがにわかりやすかったー。)
で、この“パラグラフリーディング”術の中で、着目すべきキーポイントが“ディスコースマーカー”である連結詞・接続詞・副詞句、などなどであり、例えば、長文読解では、この標識“ディスコースマーカー”のおかげで、焦点を当てるべき重要ポイントが把握できるから、文章を全部隅から隅まで読む必要がなくなる為、よりスピーディーにしかもより確実に文章全体の構造を理解しつつ読むことができる、ということのようです。
具体的には、ざっくりいうと、「序論・本論・結論」で文章全体が構成されているとすると、どこまでが「序論」で、どこからが「結論」かなどを明示したり、また、読み手が筆者の主張を把握しやすくする助けをする働きがあったり。
ほかにも例えば、“逆接(だが、しかし)の言葉のあとには主張がくることが多め”などの方式があったり。
また、上記の役割4.「次にくる展開を予測するための目印となる」の簡単な例として:
peroが出てきたら⇒その後ろが前文の内容を否定している
などなど。
普段、意識せずに果てしなくなんとなしに使っているものも、こんな風にわざわざ言葉で説明されると、色々な「確かに。」に出会えます。
意識する、って大事っぽいです。何かが変わってくる気がします。
◎“5行エッセイ”をロジカル発展させる
ここでやっと、“5行エッセイ”の話に戻ります。
前前記事と前記事に載せた例Ⅰ:「夏が好き」な件↓を例にしてみます。
①結論 | A mí me gusta más el verano. |
②理由1個目 | Los días son más largos. |
③理由2個目 | Podemos vestirnos con menos ropa. |
④理由3個目 | Podemos viajar com mi familia. |
⑤結論の繰り返し(言い換えて) | Mi estación favorita es verano./La estación que más me gusta es verano. |
ここに、うわさのキレキレ“ディスコースマーカー”(太字)をいろいろ加えるてみるとこうなります:
①結論 | A mí me gusta más el verano. |
(Hay tres razones.) | |
②理由1個目 | En primer lugar, es porque los días son más largos. |
③理由2個目 | En segundo lugar, también es porque podemos vestirnos con menos ropa. |
④理由3個目 | Por último, es porque podemos viajar com mi familia. |
⑤結論の繰り返し(言い換えて) | Por todo ello, mi estación favorita es verano./La estación que más me gusta es verano. |
あ~。
上部で、さんざんキレキレ度を説明してたけど、これのことかあ。となることでしょう。
いわゆる「らしくなる」、ってやつですね。
ちょっと賢そうに見えるようになる、ってやつですね。
でも、より滑らかにスムーズに論理的に話を進めることができているのは明らかです。
◎まとめると。
この道しるべとなるマークを的確に迅速に察知・意識することで、
①受け身(読み手・聴き手)サイドの視点からいえば:
- お、こいつ、まとめてくる気だな
- お、こやつ、具体例を投げてくるつもりだな
- お、こいつ、言い訳してやがるな
- お、こいつ、遠回しに言って責任逃れする気な
- お、こいつ、まだ、付け加えてくるのか
- お、こいつ、実は皮肉屋だな
- お、こいつ、とにかくくどい!
- (※敵意はない)
などと
事前に心構えができるゆえ相手の言い分が理解しやすくなったり、場合によっては、知りたくなかった人間性まで感じ取れるレベルまでに深く理解できてしまったりすることがあるかもしれない、と思います。
そして次に、ここでの本題である、
②発信側(会話やスピーチの話し手)サイドの視点からだと(論説文などの書き手サイドの場合も同じく):
この“ディスコースマーカー”は、
- あのーいまから、まとめに入ります
- あのー譲歩気味だったさっきとは打って変わって、いまから思いっきり主張します
- あのーいまからとても良いこと言うので、耳の穴かっぽじってよく聞いてください
- あのー先ほどいったことを詳しく説明します
- あのーいまから具体例いきます
- あのーいまから逆のこと言います
- あのー色々一般論述べましたが全部忘れてください、今からが本音です
- あのーいまから因果関係説明します
- あのー最後にもうひとついいですか
などなどの意図や今から話すことの前触れというか予告みたいなものを示すことによって、相手の理解を促進させて、会話やスピーチ全体の流れがスムーズに運ぶようにしたり、話の区切りや話題の切り替わるポイントを相手に示すことができ、また、相手に聴く態勢を整えさせる余裕を与え、そして、当の話し手にとっても、一瞬ながら、一息ついたり考えたり勢いをつけたりするポイントともなります。
また、順序良く進めることで、相手にとっても話し手にとっても、話の筋を見失わないための目印・道しるべとなるので、自然会話においてだと、より円滑なコミュニケーションが生まれえそうです。
〆
いやー、ちょっと、持ち上げすぎました、たかが、ディスコースマーカーごときで。
こんな技も、基礎語学力あってこそのものであるのを忘れてはならないのに、これ書いてるときちょっと忘れてました。
にせよ、されど、ディスコースマーカーです。
なんだかとっても有能そうなのは変わりません。
でも、使いこなせなければ意味ありません。
実際、自分自身の場合も、使いこなせるものがすごく少なくそしてしょぼいです。
ということで、次回は、実際に巧みに使いこなせるようになるには具体的に何をすればいいのか、の考察と、くさるほどあるらしい“ディスコースマーカー”のスペイン語ものについてまとめれるものならまとめてみようと思います。
前記事»「スペイン語で論理的に話す楽な方法探索:其の一」「其の二」
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