◆書写とは◆
文字を書き取ること。テキストを書き写すこと。
例えば、語学において、ディクテーションは耳だけを頼りに聴いたものを書き取る学習法だけど、この書写は、目だけ使って読んだものを書き写す学習法。
ただ、重要ポイントとして、書写対象がどんなテキスト素材でもいいというわけではなく、
なようです。
そのことから、きっと、できれば、書写する対象は、書き言葉で出来ている文章であるリーディング教材がいいはずです。
ところが、個人的に書写しているのは、個人の都合上(ただの習慣と好み)、後に音読するための素材なので、リスニング音声素材です。でも、C2レベルの教材になると、リスニング素材でも講演とかあんまりくだけた感じではないインタビューやラジオでの対話とかを扱ったものが多いので、俗語バンバン出てきたりフランクすぎだったりと口語口語していないと思われるので、個人的には、よし、としています。
でも、今後、もっと速記できるようになったあかつきには、リーディング素材ででも書写をやってみたい気持ちはやまやまです。
◆書写の効果◆
ネイティブスピーカーの書いた文章を書き写すことを繰り返すことによって、単に読んでいるだけの時と違い、様々な正しい形の文章の見本により深く触れることができるので、結果的に、“正しく書く” という事が身に付き、それが、自分で文章をうまく作る能力獲得につながる、ということのようです。
身に付く能力としては、例えば、よく使われる文章の展開や表現方法などは当然として、もっと細かい所では、符号(コンマ・ピリオド・コロン・セミコロン・引用符などなど)の正しい使い方、などが挙げられています。
また、単に読んだり(黙読・音読)しているだけでは、気付かないこと(=読む際にはスルーしてもなんの問題もないこと)に色々気付くことができます。
具体的には、アクセントや綴りのあやふやさや思い違い、普段から良く耳にしてはいた簡単な言葉だけど初めて書いて文字にしてみた時に感じる違和感(日本語でも起こる、あれ)、などなど。
例えば、「fascinante」という単語を初めて文字にしてみた時(確かこれはディクテーション時)、「facinante」と書き取ってしまいました。もちろん以前に文字として見たこともあるし音として耳にしたこともある単語なので意味は知っているのに、です。
ま、この、まさか、「sc」だったなんて!!みたいなのは、頻繁にあります(例:escena, 他にもあったような気がするけど今思い浮かびません:あ、あった、consciente, disciplina)。あと、「inhibir」とかの、「h」にまんまとしてやられるやつ。耳で聴き取った単語を、いくら辞書で探しても見つからない時は、まず、“もしや「sc」なの?「h」抜け?疑惑”をかけるようにしています。
あと、いつまでも自分が、例えば、「abusoluto」とか書いてしまったりすることにも気づきます(正解⇒「absoluto」)。そして、単純に、「s」と「c」と「z」のつづり間違いとか、もう挙げだしたらきりがないほど腐るほどそんな思い違いや間違いや単に知らないことがあることを知り、少しずつながら正していくことができます。
あと、個人的には、冠詞(定不定冠詞・冠詞有り無し)の感覚なども、なんとなくながら、つかめます。ネイティブでもちゃんと説明ができない、と噂の、あの、冠詞の感覚です。
まず、“手”に関しては、スペイン語の “手書き” の効果的な練習になります。日本語ですら手書きの機会が少なくなっているこの御時世においては、いい機会です。
そして、この、スペイン語の “手書き” 練習は、思いのほか大事だと個人的には思います。
まず第一に、DELE試験のスペイン語作文パートは “手書き” で、さらには、大量に書きこなさないといけないので、普通に書ける、程度ではなく、
速くそして正しく書ける必要
があります。
また、もし仮に、検定など受けないとしても、スペイン語上級者をめざす学習者がある程度のスピードでスペイン語を手書きできないと、なんかまずい、と個人的には感じます。
そして、もちろん同時に、デジタル機器(PC・スマホ・タブレット)などでも、スペイン語での速いタイピング能力も磨く必要があります。
新しい国際スペイン語検定SIELEでの西作文はタイピングみたいだし、そしてなにより、実社会においても、もちろんその能力は求められます。
でも、タイピングだと、誤字を自動認識してくれる機能があったり、初めの数文字で予測された言葉が出てきたりして選択するだけでよかったりするので、ありがたいのはありがたいのですが、学ぶという面では、間違えに気付かなかったり、と効果が弱いような感じがします。
そして、タイピングだけ得意で手書きは苦手、は避けるべきかな、と個人的には考えます。両方得意、が理想です。
で、“脳”の方は、いろんな正しい文章にたくさん触れることで、いろいろなパターンに馴染んで、自己表現時にすぐ取り出せる表現や文章の効果的な順番などの例のストックを自分の脳の引き出しに徐々に増やしていくことができる、ようです。
これは、結構大事で、DELE試験のスペイン語作文でも、この語数感覚は必須です。
例えば、自分の文字で書いた文章が、この見た目で、このボリュームの感じで、大体何語ぐらいだ、という感覚は、自分で手書きで書かないと身に付きません。
もちろん、自分でどんどん作文練習をしていくのが一番なのですが、この “書写” でも、その感覚は養えます。
◆書写の方法◆
声に出して音読しながら書き写すとより効果的、という意見もあるようです。
方法としての注意点は、一語一語ではなく、ある程度のかたまり単位で書き写していく(例:センテンスごと、又は長ければ、意味単位で区切ったり、短ければ複数センテンスごと)こと。
個人的には、ある程度のかたまり(複数センテンス)を何度か読んで(黙読でも音読でもいい)意味や構文を把握してから、スクリプトから極力目を離して、書き写して行く、というやり方でやっています。
◆まとめ◆
こんなにいろいろ書写について書いておきながら、こんなこというのもなんですが、実際は、速く正しく書く訓練に関しては、自分の言葉で自分の考えを書く作文練習をただひたすらたくさんするのが、そら一番いい、し正しい方法なのだろうと思われます。
しかしながら、まだ、考え考えしながらしか書けない段階だから、書く内容を考えなくてよくて、ただ書く、ひたすら速くしかも正しく書く、という練習には、“書写” はもってこいな感じがしています。
つまり、自作文というアウトプット作文練習の積み重ねが一番重要なのだけど、それだけでなく、上手い文章の見本を吸収できるという利点がある、“書写” というインプット作文も良いようなのです。
そういえば、今になって、よくよく考えてみると、以前一定期間やっていたディクテーションの書き取りでも、結構、“正しく書く”ことに関しての諸々・語数感覚・書くことへの慣れ、など、学んだことがたくさんありました。
要は、ここでも、アウトプットとインプットをバランスよく、ということです、ということで。